京都×漫画

漫画と絡めて"ゆるく"京都の面白い豆知識や歴史・観光情報を紹介!◆カテゴリからご覧いただくのがオススメ◆

MENU

◆【趣味回】読書感想文『その可能性はすでに考えた』

井上真偽さんの『その可能性はすでに考えた』についての感想文です。
この作品に対する批判的な内容は一切ありません。

また、最後に述べますが、1人でも
「この本を読みたい」と思ってもらえれば嬉しいですので、ネタバレはしていないつもりです。

長くなりますが、学生時代ぶりの本気の読書感想文、最後までお読みいただければ幸いです。

 

f:id:ARSHAVIN:20200906160506j:image

 

●最も重要なこと、それは申し分ない読後感

「その可能性はすでに考えた」

このセリフから始まる主人公の反証。
反証するということはつまり事件に対する仮説が別の誰かから提示されるということ。

 

事件の「真相」を主人公である探偵が暴くのでなく、第三者が提示した「真相になりえる仮説」を探偵が反証する。

 

この設定は斬新だ。
いや、世間的には斬新なのかもしれないが、個人的にはとても斬新だ。

 

ここで一つ言っておきたい。
普段のブログでは丁寧な語調で文を綴っているが、影響を受けやすい性質なので、こういった小説を読んだ後はとても「です・ます」調で文が書けない。

 

 

話を戻そう。
そもそもの探偵の役割が面白いのだから、その時点で期待しかない。

 

そして、肝心の論理展開も申し分ない。
私の脳が未熟なだけだろうが、読んでいて「小難しい言葉並べて雰囲気で誤魔化してんなよ」って思う作品にも出会うことがある。

 

そんな作品の読後感は、全くすっきりしない。
だが、この作品の読後感は、非常にすっきりとしたものだ。

 

事件自体凄惨なものだし、途中途中に挟み込まれる残虐な情報も、そして探偵が最後に披露するやりきれない「ストーリー」も、全てがその素晴らしい文章・論理展開によって、作品を成り立たせる重要なパーツへと昇華される。

 

そうなれば、いかに凄惨で残虐な事件・状況・物語でも、「飲み込み、消化する」ことができる。
肝心の探偵の「仕事」が論理的かつ納得できるものでなければ、消化不良を起こし、ただただ気分の悪さだけが残る。

 

そうならなかった事実が、少なくとも私にとってこの作品が素晴らしかったことを証明している。

 

 

●私の「読み方」とキャラ設定

私は、作品を読むとき、頭にその情景を思い浮かべたり、登場人物の視点から物語に入り込んで読むのが好きなのだが、この作品はそうしやすかった。すぐに登場人物の容姿・性格・喋り方がイメージできた

 

ミステリー好きにあるまじきことかもしれないが、事件現場、今回であれば村、よくある設定だと館や島など、その全体図をイメージするのは好きではない。

 

それは、探偵役の推理で100%驚きたいからだ。
自分で推理する気はあまりなく、騙されるなら思いきり騙されたい
もちろん、騙されるに必要最低限の推理はするが。
現場の設定など、探偵が「あのとき、こうでしたね」と振り返ったときに見返して「あ、そういえば、」となれば良い。
この読み方が好きだからこうしている。

 

だからこそ、私が作品を楽しむ上で大切にしているのは、登場人物のイメージのし易さ、もっといえば、登場人物が台詞を発している姿がどれだけ鮮明にイメージできるかが大事なのだ。そして、矛盾していると思うが、顔が「俳優の○○みたい」といった様にくっきり思い浮かばなくてもいい。むしろ思い浮かぶと先入観になる。
頭の中のことを説明するのは難しい。

 

簡単に言えば、演者の顔だけがぼんやりとしたドラマや映画を頭の中で流している感じだろうか。

 

そして、話をこの作品に戻すが、非常にイメージしやすかった。つまり、非常に「読みやすかった」ということだ。

 

登場人物が美形ばかり、かつ裏社会に生きるというリアリティのない設定も、イメージを増長させてくれることはあれど、妨げにはならない。
肝心なのは、リアリティのない設定でも、リアリティをもって頭の中にキャラを描かせてくれる、高い文章力なのだ。
そして、この作品にはそれがある。

 


●作品の構成

そしてこの作品は、構成が素晴らしい。

 

・作品の大まかな世界観の説明と事件の説明。

・第一の刺客による事件の真相たりえる仮説の披露とそれに対する反証。

・第二の刺客による、以下同文。

・第三の刺客に、以下同文。

・ラスボス登場とこの作品の設定自体への挑戦。

・諸々の回収と、描かれる「ストーリー」。

 

とこんなところか。
最後だけネタバレを避けるには曖昧にせざるを得なかったが、まるで短編小説のエッセンスが多分に取り入れられた構成。

1話完結の短編の読みやすさと、単純に1話完結では終わらない長編の奥深さとが、絶妙なバランスで合わさっている。脱帽である。

 


●まとめ

この作品は、

・主人公である探偵の斬新な役割。
・納得できる論理展開。
・高い文章力による登場人物のイメージのしやすさ。
・読みやすい構成。

の4つの点から、素晴らしい作品と言えるのではないだろうか。
あくまで、個人的に、であるが。

 

誰が何と言おうと、読んだ自分が素晴らしいと感じれば素晴らしいものだ。
少なくとも、今の私はこの作品を面白いと思った

 

この作品を面白いと思った私の感想が、この感想を読んでくださった方に「読みたい」と思わせることができたなら幸いである。

 


※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。長々と拙文で申し訳ありません…最後にも書きましたが、この感想がきっかけで、この素晴らしい作品を読もうと思ってくださる方が1人でもいらっしゃれば、本好きとしてこれ以上嬉しいことはありません。