●まえがき
みなさんご存知、『鋼の錬金術師』。
名作中の名作。
私のブログでも何度かお世話になっておりますが、この作品、褒めだすとキリがありません。
今回、どうしても語りたくなってしまったのは、
『涙』
について。
ハガレンは、涙の見せ方・使い方が非常に上手いと思っています。
そこで、涙の名場面と題打ちましたが、こっちが泣いてしまう場面ではなく、登場キャラが『涙』している場面のうち、印象深いものを紹介していきます。
まあ、どれもこっちが泣いてしまう場面でもあるんですけどね。
書き始めて気づいたのですが、余りにもたくさんあるので、全5回に分けて紹介します。
京都関係ないのにまさかの長編になってしまいました…
それぞれ、巻数も記していますので、読み返したくなった方はすぐに!!ブログの画像は、その場面が収録されている巻ですよ!
●アルを叱る、ウィンリィ。(4巻)
牛乳が嫌いなエド。
病院食で出される牛乳を残そうとすると、チビいじりがスタート。
エド
「みんなしてちいさいちいさい言いやがって!
アルはいいよな身体がでかくてさ」
アル
「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない!」
「みんなでボクを騙してるんじゃないか…」
つまり、アルは、自分のことを、エドが一から作り上げた「偽物の弟」と思い込み、疑心暗鬼になってエドに怒りをぶつけてしまったわけ。
そのアルの怒りを目の当たりにしたウィンリィ。
泣きながらアルにこう告げる…
「エドが怖くて言えなかった事ってのはね…
アルがエドを恨んでるんじゃないかって事よ!
自分の命を捨てる覚悟で偽物の弟を作るバカがどこの世界にいるってのよ!
あんた達たった二人の兄弟じゃないの」
アルがぶつけた怒り、もし自分が肉体のない鎧姿だとしたら、そう思い込むのも仕方ないことだと思う。
そして、この疑心は、エドとの関係に亀裂を入れるに十分な威力がある。
2人で支え合うことができなければ、元の体には戻れない…
だからこそ、このウィンリィの言葉がなければ、2人の旅はここで終わっていた、そう思えさえする。
このときのウィンリィの涙は、どこか幼く映る。
幼い、というのは、母親代わり・姉代わりで、大人として叱ったのではなく、幼なじみとして、まだ少年・少女の間柄として叱った、そういう意味である。
このときの兄弟は、まだまだ幼い。
そして、それはウィンリィも同じこと。
この後の3人の成長を予感させる、そんな場面なのでピックアップした。
なかなか言いたいことを伝えるのが難しいが、今私が感じていることに共感していただくには、ウィンリィが、親の仇と知ってからスカーと対峙する場面を読んでから、この場面に戻ってみてほしい。私の言いたいことがなんとなく分かっていただけるはずだ。
●鋼の錬金術師、最高の名場面。(4巻)
ヒューズ殉職。
早すぎる死。
初めて読んだ時のショックは語り尽くせない…
殉職で二階級特進、准将になったヒューズの葬式で、その名場面は訪れる。
ヒューズの墓の前で、雨が降ってきたから早く立ち去ろうと言うマスタング。
雨は降っておらず、ホークアイも怪訝な様子。
その時のマスタングのセリフ。
「いや 雨だよ」
帽子でほとんど顔が見えないが、頬を伝う『涙』。
マスタング、あなたは不器用ですね。
誤魔化すのが下手すぎる。
だが、それがカッコいい。
とてつもなくカッコいい。
その一言にどれだけヒューズへの愛情が込められていることか。
どれだけ必死で堪えても、堪えきれず流れた涙。
イシュヴァールを経て、同僚の死にも慣れた。
軍人として、涙を見せてはいけないという矜持。
それでもなお、マスタングにとって、ヒューズは『特別』だったのだ。
たった5文字のセリフと、顔が隠れて涙だけが見えるカット。
この少ない情報に凝縮されたマスタングの想いから、この場面をピックアップ。
●グレイシアの涙に、セリフはいらない。(9巻)
エドが、ヒューズの妻・グレイシアに、ヒューズの死の責任は自分達が巻き込んだからだと説明する場面。
エドは、何度も頭を下げる。
それに対するグレイシアのセリフ。
「人助けしようとして死んだとしたらあの人らしいわね
あきらめず前へ進みなさい」
自分だって辛いはずなのに、
夫を巻き込んだエドらを怒るどころか、励ますグレイシア。
そして、エド達がヒューズ家を去った後、
窓越しに見える、泣いているグレイシアの姿。
なんと心動かされる場面だ。
<グレイシアさん、あなたは本当に強い人だ。
夫の死の真相を聞いて、心を痛めているはずなのに、エド達を励ますなんて。
夫の死を、「あの人らしい」なんて笑えるなんて。>
そう思った矢先のこの場面。
いや、そうですよね。
やっぱり辛いものは辛いですよね。
最愛の人を失って平気な訳がない…
エド達のために、そして真実のために命を失った夫の死を無駄にさせないために、
グレイシアは必死で堪えていたのだ。
込み上げてくる涙を必死で。
そう思うと、
やはりグレイシアは本当に強い女性だ。
心から尊敬に値する。
ヒューズがあそこまで惚れる理由が分かった。
●あとがき
やはり感想文を書くときは語り口が変わってしまいますね。
そして、改めて感じる、文にすることの難しさ。
そして、少ない情報でここまで心動かすことのできる漫画の偉大さ。
グレイシアの涙の場面なんて、セリフすら無いですからね。
本当にすごい。
ただの趣味にしては力が入り過ぎてしまっていますが、残り4回もぜひお楽しみください。
*ハガレンをみんなで読み返しましょう! アニメでも大丈夫!!