序章①:江戸幕府第14代将軍 徳川家茂
今回の記事のヒロインである和宮の話をする前に、江戸幕府14代将軍・徳川家茂(いえもち)の話をしておかなければなりません。
和歌山県紀州藩出身の家茂は、かの有名な大老・井伊直弼の後押しにより将軍の地位を得ました。
幕末の動乱期、日本を建てなおすため、今一度京都に目を向け、京都にて政治を行いたいと上洛(江戸から京都へ行くこと)。
そして、二条城にて政治を執り行いました。
その上洛の際に共に上洛したのが、松平容保(まつだいらかたもり)。
そう、京都守護職の地位を与えられた彼は、新選組のいわば上司なのです。
こうして京都の治安維持の制度を固めつつ、日本を建てなおそうとしましたが、家茂はわずか21歳でこの世を去ってしまうこととなるのです...
序章②:公武合体政策
もう1つ、和宮を語る上で外せないワード、『公武合体政策』について触れておきましょう。
「公」とは公家=朝廷、
「武」とは武士=幕府、
つまり、朝廷と幕府が協力することにより日本の治安を建てなおそうとする政策です。
では、なぜ「協力しなければならない」=「仲違いしていた」のか。
その流れを説明しましょう。
【①井伊直弼の暴走】
井伊直弼が、大老という立場を利用し、朝廷に無断で日米修好通商条約を締結。
これは、鎖国中の日本にとって、『開国』を意味しました。
何より問題だったのは、朝廷に無断でこれを行ったこと。
天皇を崇拝する尊皇派+異国排斥を訴える攘夷派の怒りが頂点に達しました。
「何一番大事な天皇様ないがしろにしてくれてんねん、幕府みたいなもんがイキんなや」
さらに、当時の天皇・孝明天皇が、自らブチギレたのです。
尊王攘夷派は感激し、ますます天皇に信頼を寄せることとなりました。
【②安政の大獄】
そうして怒りを爆発させた尊王攘夷派に対し、井伊直弼が打った手は、かの有名な『安政の大獄』。
尊王攘夷派を片っ端から処刑していくこととなったのです。
【③桜田門外の変】
安政の大獄という井伊直弼の横暴により、同胞を殺されまくった尊王攘夷派が考えることは1つしかありません。
そう、復讐です。
そして起こったのが、これまた有名な『桜田門外の変』なのです。
井伊直弼は暗殺されてしまいます。
【④公武合体政策】
桜田門外の変を受け、幕府側は尊王攘夷派の恐ろしさを実感することとなります。
「尊王攘夷派、思ってたよりやべえぞ...」
そして、幕府側は朝廷に公武合体政策を持ちかけることとなるのです。
この申し出は朝廷側にはメリットがなかったのですが、あの岩倉具視が、「これを機会に幕府を操り人形にできるかもしれませんぞ」と天皇たちを説得、朝廷側も了承することとなります。
しかし、結果から言えば、「幕府の陰謀」だと過激派をさらに煽ることとなってしまいました。
そうして常軌を逸した過激派が、公武合体政策の関係者を暗殺しまくる行為、これが『天誅』なのです。
本題:和宮の生涯
前置きが長くなりましたが、今回のヒロインである和宮の話に入ります。
和宮(かずのみや)は、またの名を「親子内親王(ちかこないしんのう)」と言います。
親王、つまり和宮は天皇の一族なのです。
具体的に言えば、上記で登場した、孝明天皇の妹君です。
そして、和宮が嫁いだ先が、徳川家茂なのです。
「孝明天皇の妹」・「徳川家茂の妻」、この2つの情報から導き出される事実、そう、公武合体政策の要となったのは、徳川家茂と和宮の政略結婚だったのです。
そして、この結婚は和宮が望んだものではありませんでした。
なぜなら、和宮にはそのとき既に婚約者がいたからです。
有栖川宮熾仁(ありすがわたるひと)親王という人と婚約を結んでいたのです。
しかし、岩倉具視らの説得に心奪われてしまった孝明天皇は、「家茂との結婚を断れば出家させて尼にするぞ」と脅し、強引に政略結婚を決めてしまうのです...
こうして家茂の妻となった和宮は、望まない結婚であったにも関わらず、家茂に尽くしたそうです。
自分の振る舞いに日本の未来がかかっているという責任もあったかもしれませんが、上洛と言う危険を冒す家茂の為に信心深く祈りを捧げるなど、夫のことを心から慕っていたのでしょう。
そんな家茂もわずか21歳で亡くなってしまうのですが...
和宮の人間性を語るエピソードは、家茂の死後も続きます。
家茂は第14代将軍、つまり、彼の死後の将軍は第15代将軍・慶喜です。
言い換えれば、「徳川幕府最後の将軍」。
幕府が終わるとき、和宮は、なんとか徳川家を存続させようと力を尽くしたといいます。
望んで徳川家に嫁いだわけではないにも関わらず。
そのとき、和宮と協力したのが、そう、家茂の母である、天璋院篤姫なのです。
いかがでしたでしょうか?
教科書で学ぶ様々な事件・キーワードの裏に、こんな流れがあり、こんな人物が関わっていたなんて面白くないですか?
和宮は江戸に嫁いだので京都の人物と言ってよいのかどうかわかりませんが、二条城に上洛した家茂や、天皇が京都にいた頃の朝廷と関係が非常に深いので、今回ヒロインに抜擢しました。
今でも、和宮の勇姿を、時代祭にて見ることができますよ!
番外編:轟冷(ショートのお母さん)の名場面
「望まない結婚」。
このワードを聞いて真っ先に思い浮かんだのが、ショートのお母さん、轟冷のことでした。
エンデヴァーが、オールマイトを超える個性を持った子どもを「作る」ため、金と地位にものを言わせて無理やり結婚相手に選んだ女性。
炎の個性を持つエンデヴァーが望んだのは、炎による体温上昇を防ぐことのできる、氷の個性。
ほんと、許せない話ですが、20巻のエピソードには本当に感動しました。
博多でエンデヴァーがハイエンド脳無と闘っている頃。
冷のお見舞いに訪れた、冬美(姉)と夏雄(兄)。
オールマイト引退後初めてのビルボードチャートにて、エンデヴァーが初めてNo.1の座に就いたことを冷に報告する夏雄は、エンデヴァーへの怒りを滲ませる。
「お母さんや焦凍たちの事...なかったように振る舞ってんのは許せねぇ」
「もう約10年 お母さんに謝りにも来てないんだろ」
「過去も血もあいつは置き去りにしていく気なんだ」
「それは 違うよ」
「...何でお母さんがあいつ庇うん...」
「このお花 私が好きって言ったの」
「?」
「初めて会った頃 たった一度」
「…お父さん来たの...!?」(冬美)
「何度か来てるみたい」
ー中略ー
「でもね 置き去りじゃないよ」
「過去も血も 向き合おうとしてることは確かだよ」
そうして、轟家のエピソードは続いていくわけなのですが、どうなっていくかは原作を読んでください!!!!
そして、この病室でのシーンに戻ってきてください。
涙が止まりませんから。